デュランが買い出しから帰ると二人とも眠っていて、起きそうにないのでそのままにした。
翌朝はお風呂に入り損ねたと騒ぐシャルロットの朝風呂が終わるのを待って朝食をとって荷物を整理して、そんなことをしていたら出発が遅くなったのだった。
(…この街道……つい最近通ったんだよなぁ)
自由都市マイアで得たのはフォルセナの英雄王がマナストーンに詳しいという情報で……当然次の目的地はデュランの故郷、フォルセナ。
数日前にフォルセナから旅立ったデュランにとって今いる黄金の街道は記憶に新しいが、ケヴィンとシャルロットは物珍しさにはしゃいでいた
「“ここ…先は、が…”……だめだ、難しくてオイラ読めない…」
「むずかしいんじゃなくて、もじがかすれてるんでちよ」
「え、こういう文字じゃないのか?」
道中何か見つけては興味津々に近付き…うっかりポロンというモンスターに出くわしてダーツを投げつけられたりもした。
モンスターとの戦闘はいい修行になるのでむしろ嫌ではないが…あまりゆっくりしすぎるとデュランの頭の中でフェアリーの急かす声が響き渡るのだ。
デュランは髪をわしゃわしゃして軽い頭痛に近い感覚を紛らわす。
「…急げばいいんだろ、急げば………シャルロット、ケヴィン、道はわかってんだからとっと行くぞ?」
「ケヴィンしゃんいまちた!あれ!」
「よし!」
「って聞いてんのか二人ともー」
「アウっ!?」
シャルロットの言う方へと飛び出したケヴィンの前に、ぼふんっ!という音を立てて煙が上がった。
「ありゃ~、おしいでちね…」
「何をやってんだよ?」
「サボテンさがしでち!」
「サボテン?…あー、さっき会った旅人が言ってたやつか」
見つけると良いことが起こるが、すぐに逃げてしまうシャイなサボテン君……そんな不思議な生き物をちょうど今見つけたところだったと。
「見つけるだけでいいんだろ?なんで残念がってんだ」
「オイラ、ちょっぴりさわりたかった…」
「シャルロットもでち!だからこんどみつけたときはつかまえるでち!」
『もー!!二人ともはしゃぎすぎよ!!!』
しびれを切らしたフェアリーが外へ出てきて二人に一喝する。
『寄り道してないで早くフォルセナに行きましょうっ!』
「そうだぞ。どうしてもなんか触りたいなら、その辺のラビで我慢しろ」
『デュランも何言ってるのよ!』
「その手があった!オイラ、ラビ抱っこする!シャルロットはもふもふするんだ!」
「りょーかいでち!」
「あ、おい!冗談を真に受けんじゃねえぇぇ!!」
危ねえぞとやや喚きながらデュランは二人を追いかける……少し道を外れるとラビ以外のモンスターもいて安全ではないのだから。
【はぁ……この先不安だわ…】
もはや急かすのを諦めたフェアリーはデュランの中へ戻りため息をつくのだった。