一部始終見ていたホークアイが言うには、デュラン達はこの牢屋…城塞都市ジャド領主の館の地下牢に運ばれてからだいぶ長い時間起きなかったようだ。
やがて先に目を覚ましたシャルロットが大怪我をしているケヴィンを見てパニックになり…すがりついて泣き出した。
「そしたらシャルロットの手から優しい光が溢れて、少年の傷を癒したってわけだ」
傷を癒しても泣きっぱなしのシャルロットはそれに気付かず、見かねたホークアイが声をかけたのだった。
「俺の親友も使ってた魔法なんだが、シャルロットは無意識に『ヒールライト』……回復魔法を唱えてたんだ」
「か、回復魔法!?」
【きっと光の精霊が仲間に加わった事でシャルロットの力を引き出せたのね…相性が良いってウィスプさん言ってたもの!】
ホークアイを驚かせないようにか、フェアリーがデュランにだけ聴こえる心の声で説明した。
「で、少年はもう大丈夫だからお嬢ちゃん自身とそっちのおにいちゃんにも唱えてみな?って言ったら、アッサリと回復魔法を使いこなせちゃったんだ」
「えっへんでち!」
確かに言われてから気付いたが、デュランが負っていた傷も治っているしどこも痛くない……普通に動ける体力も戻っていた。
「だけど、キミ達が起きないから泣き止まなくて…気晴らしになるかと思って俺の話し相手になってもらってたんだ♪」
「そうだったのか…シャルロットが世話になったな、ありがとう…えっと、ホークアイ」
「いいっていいって!こんな暗い牢獄の中で、可愛い女の子と話せてラッキーだったしな…ところでキミは、デュランしゃんだっけ?」
「しゃんはいらねぇよ。デュランだデュラン」
「…なーんかデュラン、つい最近どっかで見たような気がするんだよな」
「?オレはフォルセナから来たけど……最近行ったのはジャドとかウェンデル…」
「あ、そうだっ!ジャドの宿で美女にビンタされてた旅人だ!!」
「…は?」
デュランは城塞都市ジャドで情報集めをし、道具屋でケヴィンと話した後は軽く街を回り、最終的には宿屋にも行き…そこでひと悶着あったのだ。
「デュランしゃん…いったいなにをしたらびじょにビンタされるんでちか?」
「待て、誤解だ誤解っ!」
「いやーあんな美女なら確かに寝顔を覗きたくなるのもわかるけどな…」
「バ、バカ違うっつの!!あいつは街でビースト兵に喧嘩売って返り討ちにあってたのを偶然見つけて、宿屋に運んだだけだ!なのに勘違いしてひっぱたいてきたんだよ!!」
「おいおい、せっかく美女とお近づきになれそうなシュチエーションなのに運悪いなキミ…」
「望んでねーよそんなことっ!」
「ぅん……」
「あ!ケヴィンしゃんも気が付いたでち!」
騒がしくしていたからかずっと眠っていたケヴィンもようやく目を覚ました。
「二人とも、無事…?」
「みんな無事でちよ!」
「良かった……また、獣人が酷いことした、ごめ-」
「コラ謝るな。おまえはオレ達の仲間で、ビースト兵じゃないだろ…オレもシャルロットも気にしてねーよ」
「ありがとう………あと、デュラン…」
「ん?」
「えっと………なんでオイラ、シャルロットの膝で寝てるんだ?」
「…そういやなんでだ?」
今更ながら疑問を投げ掛けると『サービスでち!』とシャルロットは返した。
「おとこのこはこうするといやされるってホークアイしゃんにききまちた」
「ああ、冷たい牢屋の床より女の子の膝のがいいだろ?」
「おっまえなぁ……シャルロットに変なこと教えんなよ…」
「悪い悪い、おにいちゃん!将来性ありそうなお嬢ちゃんだったからついな……10年後が楽しみだな♪」
「??にじゅーごさいのシャルロットがたのしみなんでちか?」
「ん??…10年後が25歳?…………え???」