『いやー久しぶりに外の空気を吸えたッス!』
光の精霊ウィル・オ・ウィスプはフルメタルハガーの体内に封じられていた…デュラン達がフルメタルハガーを倒した事でこうして解放されたのだ。
「外っつってもまだ洞窟の中だぞ?」
『いやいやそれでも良い空気ッスよ♪あのカニの中はジメジメしてたッスからね~!』
「…なんか軽いんだよなぁこいつ」
『そりゃそうッスよ!オレは光の精霊!おもーい空気を明るくかるーくするッスよ!』
「いやそうじゃなくて…」
『とにかくよろしくね!ウィスプさん!』
『はいよろしくッス!どうやらこのお三方はオレと相性もいいみたいだから、張り切るッスよ~!』
「……用がある時は呼ぶから、休憩がてら引っ込んでてくれ」
『アイアイサー!』
張り切ってくれるならまあいいかとデュランが溜め息をついて歩き出し…ケヴィンも続いていこうとするがシャルロットは俯き、その場を動かずにいた。
「シャルロット?…どこか怪我したか?」
「ちがいまち……それにけがをしたのはケヴィンしゃんでち、シャルロットをかばったから」
「オイラ平気、だから気にしない!」
「……だっ!」
「おーい早く行くぞー?」
「デュラン呼んでる、行こう?」
「……だ…だけど…」
なかなか動かない二人に気付いたデュランは小走りで戻ってきた。
「おまえら何してんだよ……ってケヴィン、また服乾かさないとだな」
「ほっといても乾くぞ?」
「全身びしょびしょのままじゃ風邪引くっつの!替えの服だって持ってないんだろ?」
ケヴィンは旅の準備をほとんどしないで故郷を飛び出してきたため、森の木の実やモンスターが落としていったアイテムと小銭くらいしか持っていない。
「ウェンデルに戻ったら服以外にも買い揃えるか」
「えぇっと…オイラ、あまりお金無い」
「少しくらいならオレが払える。それに旅人ならではの稼ぎ方を教えとくよ…道具屋で買い取ってもらえるアイテムとか、けっこうあるんだぞ」
「そ、そうなのか?」
「ああ、ついでにオレも武器を見たかったし……三人分の旅支度をしておこうぜ」
「…え、さんにんぶん、でちか?」
シャルロットがようやく顔を上げ…デュランはシャルロットと目が合うとイタズラっぽく笑った。
「どうせ断ったって勝手についてくるんだろ?なら堂々と一緒に来い…けどオレの修行の邪魔はするんじゃねーぞ、シャルロット!」
「!…はいでちっ!!」
「良かった!これで三人一緒!」
「ケヴィンしゃんはシャルロットがついてくの、はんたいしてたんじゃないんでちか?」
「だって心配だった。でも、オイラがしっかり守れば大丈夫ってさっき気づいた!」
「またむちゃするきでちか!ダメでちよそんなの!」
「無茶じゃない、オイラ獣人!」
「じゅーじんでもダメなもんはダメでち!」
「仲間同士で喧嘩すんなって…」
三人はしばし談笑しながら歩き、横穴を抜けた場所で再びフェアリーにマナの力で反対側へ運んでもらった……しかしその時…。
「「「っ!!?」」」
『獣人!?なんてことするのよ!!!』
突然現れた獣人達に襲われ、三人は洞窟の底まで落ちてしまった。
(ちくしょうっ…ビースト兵め……みんなは…)
小さなシャルロットは大丈夫だろうか、怪我を負っていたケヴィンも傷口が開いたりしてないか……確かめたいのに頭がハッキリしてくれない。
「……デュランっ…シャル、ロット…ごめ…ん…」
苦しそうに謝るケヴィンの声が聴こえ、デュランは『おまえが謝ることじゃない』と言いたかったが…そこで意識が完全に途切れた。