第34話『助け合う力』


「シャルロットこっち!」




ケヴィンはゴーヴァが呼び出したゴースト達の合間を潜り抜けてシャルロットの手を引く。


ゴーヴァの弱点は光魔法らしく…シャルロットのホーリーボールを喰らわせケヴィンが追い込むという戦い方が効いていたが、うまくいっていたのは途中までだ。




「ど、どうしたの??」


「…っ、……」



シャルロットはついさっきゴーヴァの攻撃を受けてからは魔法を唱えていない、それどころか声を上げていない。


『ブラックレイン』


「…ちょっと我慢して!」

「!!」



シャルロットを抱えてゴーヴァの魔法攻撃を避け…ケヴィンはそのまま走る。




「シャルロットどこか怪我したっ?痛くて声出せない??」


「…!……っ!!」




シャルロットは首を振るが、涙目で顔を上げるとケヴィンの服を掴んで何かをうったえるようにもう一度首を振った。




「え、えぇと……うーん………」



「っ!?~~っ!!!」

「アウ!違った!?ご、ごめん!!」





ゴーヴァが怖くて戦えなくなったという訳でもなさそうだが、どうしたらいいかわからず……シャルロットの頭を撫でてみたら声を出さずにポコポコはたかれた。




「オ、オイラわからなくて……デュランならこうするかなって…」



「……!…」


「ん??……キャウッ!!?ちょっ、シャル、ロッ………くすぐっ、たっ…あっははっ!!」



シャルロットはケヴィンの上着に手を突っ込み、内ポケットを探ろうとしている様だが……今のケヴィンは獣化しているためモコモコした体毛が邪魔をする。


ウェアウルフのケヴィンからしたらお腹回りをもふもふされ…くすぐられているようなものだった。


「…!」



「っ!!…ふえ、……はぁ、終わ、った…?」



ようやくポケットから見付けたものを取り出すとケヴィンからピョンと降りる……ケヴィンはシャルロットを抱え、くすぐったいのを耐えつつゴースト達を避けながら走っていたのでだいぶ息を切らしていた。



「ごほっ、けほんっ!!」


「だ…大丈夫?」


ケヴィンは咳き込んでいるシャルロットの背中をさすり……背後からゴーヴァの気配を感じたため再度シャルロットを抱えて走り出す。


「くはぁ……だいじょぶでち…」


「シャルロット!声戻った?」


「ケヴィンしゃんのプイプイそうをもらいまちた。もうへいきでちよ…」


「そっか!オイラ、デュランに言われていつもプイプイ草持ってたんだ」



もしもの時に備え、道具袋以外のところにいくつかアイテムを所持している……ケヴィンは旅を初めた頃に貰った時の癖で、プイプイ草はいつも上着のポケットにしまうようにしていてシャルロットもそれを覚えていた。



「さっきのは『ちんもく』っていうでち。ああなるとまほーがつかえましぇん」



声が出なくなり、心の中まで集中力が切れて魔法を唱えられなくなる状態異常『沈黙』……ゴーヴァの攻撃による特殊能力のせいらしい。



「だからなるべくコウゲキをよけないと……そういえばケヴィンしゃんはぜんぜんあたってないでちね」


ケヴィンの動きがいつも以上に良いため、シャルロットはヒールライトをほとんど使っていないのだ。



「アイツ、闇があるからわかる」


「やみ?」



「………少し、ここから見てて」


「え、」




ケヴィンは船内への入口まで戻っていったんシャルロットを降ろし…甲板の中心に立つと目を閉じた。



「ケヴィンしゃんあぶな…っ!」


シャルロットが見守る中、ケヴィンは目を閉じたままゴーヴァの魔法攻撃もゴーストの突進もすべて避けきった。



「す、すごいでち…」



「オイラが闇にクラスチェンジしたからできるみたい……それに目つぶってると、闇のマナ感じやすい気がする」


「そうでち!ケヴィンしゃんそれでちっ!!」

「あぅ??」



シャルロットはケヴィンに飛び乗って、慣れてきた肩ぐるまの形におさまる。




「ケヴィンしゃんさっきみたいによけつづけて!そのあいだにシャルロットもめをつぶって、とくだいのホーリーボールをつくるでちっ!」


「え……オイラに任せちゃうの、怖くないか?」


「ケヴィンしゃんをしんじてるからこわくないでち!それにこうやっていっしょにいれば、ユーレイなんてへっちゃらでちよ!」


「…そっか、うん!オイラのこと信じて!オイラもシャルロット信じる!」


「はぁい!」





ケヴィンが再び目を閉じて軽やかにゴーヴァの攻撃を避け……シャルロットも目を閉じて光魔法に集中する。





(闇の力、わかる……これなら大丈夫…)




ケヴィンが闇へとクラスチェンジしたのは、力強さで選んだのもあるが……直前にデュランを見たことも関係している。


デュランは仲間を護り導く光へとクラスチェンジした…その影響で、自分は前衛に出て仲間の道を切り開くことが出来る闇に進みたいと思った。


(これがオイラがやりたかったこと……シャルロットの力になって、デュランを助けられる!)





「…じゅんびオーケーでち、ケヴィンしゃんあとはおねがい!」




シャルロットも目を閉じていることで視覚的な恐怖が減り、集中力も相まって強力なホーリーボールを創り出せたようだ。




ケヴィンはさらに神経を研ぎ澄ましてゴーヴァの位置を探り……闇の力を一番強く感じる方角へ体ごと向いて声を上げた。


「シャルロットいまだっ!」

「ホーリィィボールでち!!」



『!!!…みごと、だ……』



強い衝撃と共にまばゆい光が辺り全体に溢れ、ゴーヴァは満足したように消えていった。



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