『……良かった、二人とも大丈夫そうよ』
『おお、そうか』
『あ!首の無い女神像を見付けて怖がってるみたい』
『へぇ…ずいぶん変わったデザインだな』
『そんなバチ当たりな像を作る訳ないでしょ!きっと後から壊されたのよ!』
フェアリーはテレパシーによる力を使い、別の階へ進んだケヴィン達の会話を聴いて様子をうかがっていた。
『さっきみたいに変な仕掛けがなければいいけどな。指定通りに本をしまったり…』
『謎解きとかは苦手だものね……もし行き詰まったらデュランと交代するしかないかしら?』
『いや、あいつらにはここで一人で待つのキツいだろ…オレはおまえがいるからいいけどよ』
『あら、嬉しいこと言ってくれるのね♪』
『ああ。フェアリーにとり憑かれ済みのオレなら、これ以上呪いが強くなることも無さそうだろ?』
『ちょっと!それじゃ私、疫病神じゃない!』
普段から心の中で会話をしている二人だが、今のようにフェアリーが表に出ているとデュランはつい悪ふざけも交えたくなる。
『へへっ、冗談だって…フェアリーのこともけっこう頼りにしてるんだぜ?』
実際、未知な力や大型の魔物に遭遇した際はフェアリーの声にいつも助けられている。
『………私もちゃんと仲間ってことよね』
『そりゃそうだろ?何あたりまえのこと言ってんだ』
『ちょっとね…昔の仲間を思い出してたの』
デュランはフェアリーが地上へ降りてきた経緯を知っていたが、その時の詳細は今初めて聞いた。
マナの女神を救うため、仲間と共に聖域を出たこと……仲間達が次々と力尽き、最後に命の残りを自分に託されたこと。
『フェアリー……そんな辛い状況で彷徨ってたのか…』
『でも、あなたに逢えたわ』
『…………』
『危うく叩き斬られるところだったけどね?』
『悪かったって…』
モンスターだったら叩き斬ってみるかと、実行したわけではないが……アストリアの宿の窓から見えた不思議な光をただの好奇心で追いかけたのは他でもないデュランだ。
『なーんてね!いいのよ別に、出逢ったのがデュランで良かったってちゃんと思ってるから…たとえ偶然でもね♪』
『……そう、かよ…』
「どひゃぁぁぁ!!!ひとだまでちぃぃぃっ!!!」
「シャルロット!!そ、それウィスプっ!ひとだま違う!!」
『シャルロットさん酷いぃぃ!!!ボク光魔法使うときにいつも薄っすらいるんッスよ!?気付いてなかったんっすか!!?』
おそらく戦闘中にシャルロットがホーリーボールでも使ったのだろう…光の精霊を通して賑やかな声がこちらまで聴こえた。
『…まーったく、騒がしい仲間だぜ』
『ふふっ♪早くみんなと合流したいわね…』