シャルロットをフェアリーに任せ、自分もケヴィンの着替えを手伝ってからしっかりと装備を身に付けた。
ーギイィィ…。
(このドア、こんなに軋んでたか?……それに…)
元々照明が少ない質素な船だと思ってはいたが、部屋も廊下も最初に見た時より薄暗く…あちこち破損している。
「……いくらタダで乗れた船でも、さすがにボロボロすぎるよな?」
「ボロボロにもげんどがあるでちよ!これじゃぼったくりでちっ!」
「タダならぼったくりとは言わないだろ………もしかしてこの船、噂の幽霊せー」
ーギャアアアアアアアァァァ!!!!
「っ!ま、また聴こえたぜ…」
「もういやだよー!!シャルロットはオウチにかえるでちぃぃ!!!」
「えっ!!シャルロットやっぱりウェンデル帰っちゃう!?オイラそれやだぁ!!」
『みんな落ち着いて!!この船から微かに精霊の気配がするわ!』
再びパニックになりそうなシャルロット達を止めるようにキラキラと飛び回るフェアリー……彼女の言葉を信じ、もう少し先へと進んでみることに…。
ーボワっ!!
「ぎゃっ!何かケムリ出た!」
「ゆーれーでち!!!」
「違う!モンスターの毒ガスだ!避けろっ!」
毒ガスの先に見えたのはアンデット系モンスターのゾンビ達…後方には他の魔物もいる。
デュランはすぐにゾンビの一体を斬り倒し、毒ガスから離れた二人へ指示を出す。
「シャルロット!ホーリーボールをなるべく真ん中めがけて唱えてくれ!ケヴィンは飛び回ってる奴らを頼むっ!」
「ウ、ウン!わかったっ!!」
「ホーリーボールでちぃぃ!!!」
シャルロット達は怖がりながらも指示通り動き、モンスター達を効率よく片付けることができた。
「…こ、こわかったでち……まだすすむんでちか??」
「精霊が関わってる以上進むしかないだろうな…泳いで脱出する訳にもいかねえし。まあ今の戦闘も大丈夫だったんだ、なんとかなるだろ」
「デュ、デュランしゃん!なんでそんなにおちついてるでちっ?こわくないんでちか!?」
シャルロットはまたもや足にしがみついて怯えながらデュランを見上げる。
「えーっとな…シャルロットよく考えてみろ、精霊の影響で幽霊船みたいになってるだけなんだ。襲いかかってくるやつらも普通に実体のあるモンスターだから叩き斬れる」
「あ!そっか!本物の幽霊と違う!なら怖くない……かも?」
「ケヴィン、かもじゃなくて怖くないんだ!あんな奴らオレ達の敵じゃないだろ!」
「うん!オイラ達前より強くなった!頑張ろうシャルロット!」
「は、はいでち…!」
【本当にすっかり聖剣の勇者………二人のお兄ちゃんって感じね、デュラン♪】
(おい、別に言い直さなくていいんだよ)
【はいはい照れないの!先へ進みましょう!】
シャルロットもケヴィンもなんとか気持ちを切り替えることができたが……しばらく行くと頼みの綱であるデュラン抜きで幽霊船を進むことになり…二人とも悲鳴を上げるのだった。