第3話『ぎこちないけど穏やか』



(クラスチェンジの方法を知りたくてここまで来たが……まさかこんな事になるなんてな…)



なりゆきでフェアリーに憑かれながらも聖都ウェンデルにたどり着いたデュラン。

しかしそのフェアリーによって、マナの剣という聖剣を抜くために精霊達とマナストーンを巡るという壮大な使命を託された。




(…まあ強くなれるならそれに越したことねえけど)


「ついてきちゃだめ!」


(ん?)



神殿内で食事を済ませ、荷物整理をしていると廊下から何やらもめている声が聴こえた。




「ケヴィン、どうしたんだ?」


「デュラン!オイラが行こうとしたら、シャルロットがついてくって…」


「ついてく?」


「だから!つれてってほしいんでち!」


「それはダメ、女の子は普通ついてこない」



「…シャルロットをガキんちょあつかいしてるんでちか?」


「子供だからじゃ、なくて…」

「こーみえてシャルロットは15さいなんでちからね!」

「げげっ!オイラと同い年!?な、ならもっとダメ!」




デュランはシャルロットの年齢に驚きつつケヴィンも自分の2こ下かと思いながら、二人の会話が微妙に噛み合っていないことに気付いて仲裁に入る。


「ごめんな嬢ちゃん、ついてきたいって言われても困るんだ。司祭のおじいちゃんに怒られるぜ?」


「おじいちゃんにはないしょでいきまち!」


「内緒にしたって、さすがに男湯に入っちゃマズイと思うぞ?」



「………いまからおふろにいくんでちか?」


「おう。言っとくけど、オレの妹は嬢ちゃんより小さいが一緒に入ったりしないぞ?それともウェンデルでは15才になってもー」

「は、はいるわけないでち!!」


「だからオイラ、だめって…」


「もーわかったでちよ!ケヴィンしゃんのはれんちー!!」




シャルロットはぷんぷんしながら、去り際に『またくるでち!』と叫んで行ってしまった。


「はれんち???」

「ははっ、いいから風呂いこーぜ!」





マナストーンと精霊を探す旅の最初の目的地は、先程通ってきた滝の洞窟。

あの近くには古代神殿があり、洞窟の中で光の精霊を見たという噂もあるらしい。



「服が乾いたら出発するか…」


「うん、わかった」


「なんかおまえの服、やたら塩がついてたって言ってたぞ」


「オイラ、泳いできたから…海を」


「泳いだ!?」





ジャドを出てからほとんど休んでいなかった二人は、休憩をとるために神殿の客部屋と替えの服を貸してもらっていた。


「ところでよ、お嬢ちゃんが旅についてくることについてケヴィンはどう思う?」


「……シャルロットはオイラと同い年、でもやっぱり危ない」


「だよなぁ…」




デュランだってもし妹のウェンディがもう少し大きくて、旅についていきたいと言い出したとしても絶対反対するだろう…。


「だけど、オイラもデュランについていく立場…あんまり反対できない」


聖剣を抜くことができたら、マナの女神が願いを叶えてくれるかもしれない。

ケヴィンはその可能性にかけ…デュランの旅に同行を決めた。


「シャルロットからしたら、ずるいって思うかも…」


「…あの子も、どうしてもヒースを探したいんだもんな」


「オイラも、誰かにカールのことを任せるんじゃなくて、自分でマナの女神様にお願いして…仇だって、自分でとる……」


「そっか……まあ、まずは光の精霊探しだな」



デュラン達としばし行動を共にし、危険な旅になるとわかったらシャルロットも納得するだろうという結論にいたった。

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