第26話『花畑で見えたもの』

風の精霊ジンの力で眠りの花畑の花粉をローラント城へ飛ばし、美獣に操られているナバール兵達を一網打尽にする…いよいよ作戦決行日だ。




『では合図後に風を吹かせるダス!ご主人様、頑張って下さいダスー!』


「ご主人様呼びはやめてくれ…」



デュランはジンにそう言いながら、アマゾネス達から支給されたアイテムをケヴィンとシャルロットに分け与える。



「シャルロット!魔法のクルミ割っておいたよ!」


「あ、ありがとでち…」



ケヴィンから食べやすくした魔法のクルミを受け取り、シャルロットは緊張ぎみに自分用の道具袋を確認する。


体力・魔力回復の他に、一時的に能力を上げるもの……使うと魔法と同じ力を発揮する特殊アイテム。



(だいじょうぶ…リースしゃんやホークアイしゃんにたくさんきいたでち……つかいかたもバッチリ)



リースもホークアイも一人旅をしていたため、戦闘時に役に立つアイテムとそれの使いどころを熟知していた。

攻撃手段が敵に接近しなければならないフレイルであるシャルロットは、今回それらを使ってデュラン達のサポートをしようと決めたのだ。




(ヒールライトはバランスよく、つよいてきしゃんがでたら、シャルロットはうしろでえんご……あとはこんじょうでちっ!)


「おーいシャルロット、肩に力入りすぎだぞ?」

「デュ!デュランしゃん…」


「サポートに徹するからって、そんなに思い詰めなくていい。オレ達は今まで何度もシャルロットに助けられたんだ…おまえはけっして弱くないぞ」


「そう!シャルロットは半分獣人のオイラや、脳筋のデュランについてこれる!!だから弱くない!」

「ケヴィン今オレのこと脳筋って言ったか?」


「違うのか??『デュランは頭が筋肉でできてる脳筋だ』ってホークアイが言ってたけど…」


「ホークアイてめぇぇぇ!!!!!」




離れたところにいるホークアイへとデュランが詰め寄っていき……ケヴィンは一瞬ポカンとしてからまあいいかとシャルロットに向きなおる。



「シャルロット、あのね…」


「なんでち?」


少し躊躇ったケヴィンだが、一呼吸置くとにっこり笑って口を開いた。




「オイラ『まんまるドロップ』とか『ぱっくんチョコ』より、シャルロットのヒールライトが好き!」




「………へ?」


「それが言いたかっただけ、じゃあ頑張ろう!」



ケヴィンはデュラン達の方へ走り出して…今度はシャルロットがポカンとし、すぐ近くにいたリースはその様子を微笑ましく見ていた。




「うーん?」


「シャルロットちゃん、唸っちゃってどうしたの?」


「おいしいアメやチョコよりもヒールライトがいいなんて……ケヴィンしゃんかわってるでちね?」


「ふふっ、そうね…」



そろそろ作戦開始の合図をする時間だが……リースはあることを思い出しシャルロットに告げる。




「…私が最初にシャルロットちゃん達を見つけた時、デュランは眠らないように必死に耐えていたの」



「ねむりのはなばたけで…でちか?」


「ええ、仲間を護るために自分は眠ってはいけないと思ったのでしょう……とても切羽詰まっていたのが見てわかりました。よっぽどあなた達が大事なのね」


「うぅぅ、シャルロットはすぐねちゃってまちた…」


「それが普通なのよ?ケヴィンだってそうだったんだから……ただ、ケヴィンはね…」


「?」




リースは聴こえないように気にしてるのか…男子三人がいるほうをちらりと見てから、とても小さい声でシャルロットに耳打ちした。



「先に眠りに落ちたあなたを護るように抱え込んで眠っていたわ。どうしてもシャルロットちゃんを離そうとしないから、皆でそのまま二人一緒に運んだの…意識が無いのに、ですよ?」


リースはまた笑って言った、からかったり馬鹿にするようなものではなく……優しい笑みで。


「この話をしたのは、あなた達は三人ともお互いを大事に想っていると伝えたかったから……先日言おうと思ってたんだけど、ホークアイに先越されちゃった…」



ホークアイがわざとシャルロットの本心をデュラン達に聴かせようとした時のことだろう…二人とも同じようなやりかたでシャルロットを励まそうとしてくれたらしい。



「…リースしゃんとホークアイしゃん、なんか…にてるでちね」

「えぇっ?わわ、私ったら普段あんな感じなの!!?」



最後の最後で大声を上げてしまったリースに皆は驚いていたが……こっそりシャルロット達の会話を聴いていたフェアリーはデュランの中で笑っていた。



(フェアリー?…なんだってんだ??)


【ふふふっ!なーいしょ♪】