「シャルロットちゃん……そんな事が…」
「ただでさえ光の司祭が倒れたって聞いて不安定になってるのにな……こいつあんまり表に出さねえけど」
「ドン・ペリに会いにラビの森行った時も、様子おかしかった。声掛けても石像にぶつかったり……オイラがちびっこ状態になっても、かわいいってはしゃがなかったり」
「ケヴィン、かわいいって言ってほしかったのか?」
「ち、ちがう!この前はかわいいってはしゃいでたから違和感あっただけ!」
『もう…ケヴィンは真剣に言ってるんだから話の腰を折らないで、ホークアイ』
「あはは、ごめんごめんフェアリーちゃん!」
「…ラビの森か」
デュランはつい先日のシャルロットを思い出した。
ラビの森に入ってから確かに大人しく、時々進んでいる道とは別のところを見ていた……おそらく滝の洞窟がある方向だ。
「やっぱりウェンデルに帰りたかったのかもな……結界が張ってあるからどのみち今は戻れねえけど…」
『それにラビの森って、ヒースが拐われたところよね?』
「…っ!そう、だ……アストリアが獣人に襲われて…オイラ、ラビの森で泣いてるシャルロット見付けた。死を喰らう男にヒースさん連れてかれたんだ」
「そういやアストリアに行くためにバネクジャコを使ったって言ってたけど……つまり、いろんなこと思い出すきっかけが多かったんだな」
ラビの森やバネクジャコ、そしてツェンカーとの戦いは最初の強敵を思い出したのかもしれない。
フルメタルハガーと戦った際もシャルロットはケヴィンに庇われた。
あの時と違い回復魔法で治すことができるが、ツェンカー戦では重症を負ったケヴィンにヒールライトが効かずショックを受けていたのだ。
「自分を無力だと思って、だからこそ余計に辛いのかもしれませんね。クラスチェンジ出来ないことが…」
そう言いながらリースは眠っているシャルロットに毛布を掛け、軽く水に濡らしたハンカチで涙の跡も拭いてあげた。
「なあフェアリーちゃん、クラスチェンジ出来なかった原因はわからないのか?」
『うーん………シャルロットの中に迷いがあるように見えるの、もしかしたらそのせいかしら?』
「迷い?光と闇、どっちがいいか迷ってるのか??オイラは闇にしたけど…」
『そ、そういうわかりやすい迷いじゃないと思うわ』
「オレが言ったことを気にしてるのかもな」
『え?』
「途中で帰りたいって言わない、この先もついていけそうだと思ったら一緒にこい、とか…」
精霊探しの旅を始めて最初に交わした約束だった。
ヒースを探すためにどうしても旅についていきたいと言うシャルロットは今もこの約束を守っていて…だからこそ足手まといになりたくないのだろう。
「旅についてくるななんて、今さら言うわけねえのにな…」