風の回廊からアマゾネスのアジトに戻ったデュラン達を出迎えたのは意外な人物。
「おまえ……ホークアイ!なんでここに!?」
城塞都市ジャドの牢屋で脱出の手助けをしてくれたホークアイだった。
「ローラント城に向かう途中で眠り草の花にやられてね。アマゾネスに助けられたんだけど……デュラン達の話を聞いたから、会っていこうと思ってさ」
「…ふえ??ホークアイしゃん?」
泣きつかれてケヴィンの背中で寝そうになっていたシャルロットがホークアイに気付いて顔を出した。
「シャルロット久しぶり、と言ってもあれから二週間くらいか。元気だったか?」
「はんぶんくらいはゲンキでち」
「お?ずいぶんオシャレな服着てるじゃないか…似合ってるな、そのローブ!」
「…にあってまちか?………えへへ、デュランしゃんたちが、かってくれたんでち」
「へえ、二人ともセンスがいいんだな♪」
落ち込んでいたシャルロットが笑ったことでついそのまま談笑したくなったが、賢者ドン・ペリと風の精霊について報告するためにひとまずリース王女の元へ向かう。
ホークアイも重要な話をしたいらしく…こちらの報告が終わると他のアマゾネスは席を外してほしいといい、リースはそれに応じた。
「リース様、よろしいのですか?あのような素性のわからぬ者と…」
「大丈夫よ。デュラン達もいますから」
作戦会議に使われるアジトのいっかくにて話は進み……ホークアイは自分がナバール出身であることを打ち明けた。
そしてイザベラと名乗る『美獣』によって親友のイーグルを殺され、イーグルの妹であるジェシカは呪いをかけられてしまい、他の仲間も操られた末にローラントを占領し……ナバールはメチャクチャになってしまったと話した。
「ホークアイも、トモダチを……それに操るのっ、許さない!一緒に美獣倒そう!」
「……そうしたいんだが、呪いのせいで…美獣が死ぬとジェシカの命も尽きてしまうんだ」
「人質に取られてるって事だな…卑怯なまねしやがる」
「ああ、だから……美獣と戦うことになっても、殺さないで捕まえるだけにしてほしいんだ…」
ホークアイが頭を下げて懇願し…リースは無実の娘さんを犠牲にするわけにいかない、と迷わず承諾した。
「美獣は捕まえましょう。できるかどうかわかりませんが…」
「ひゃっほう!さすがは王女様!もうキスしちゃう!」
「!!!」
「っ!?おいちょっと待っ、おまえらは見るなぁぁ!!!」
「アウ??」
もはや手遅れだが…デュランはすぐ横にいるケヴィンとシャルロットの壁になるように目の前のテーブルに乗り出した。
「な、な、何をするんですか…わ、わた、私っ!」
「おっと、すまない。ついコーフンしてー」
「ホークアイ!!おまっ、おまえなぁ!王女相手に興奮なんてするなよ!!さっきの真面目モードはなんだったんだっ!?」
「なんだデュラン初心な反応して、おまえがされた訳じゃないだろ?それも頬だし…」
「頬だとしても子供の前でするもんじゃねえだろ普通!」
「…なんか前以上に二人の保護者っぽくなったっていうか、お兄ちゃん感が増したなデュラン!でもテーブルに乗るのはお行儀悪いぞ?なあ王女様♪」
「えっ?え、ええ、はい…」
一国の王女に対してこの距離感…もしこの場からアマゾネス達が離れていなかったら締め出されていたかもしれない。
「……おまえが何かやらかしそうで不安だよオレは…」
「大丈夫だって、これでも空気は読めるほうだからな♪」
「うん、大丈夫だデュラン。シャルロット眠ってるからさっきの見てないぞ」
一番端に座っていたシャルロットはケヴィンに寄りかかって眠っていた…ホークアイの話の途中で限界がきたのだろう。
「…穏やかに眠ってるみたいで良かったよ、事情はわからんがすごく泣いたみたいだったからな」
ホークアイはシャルロットの様子を見て気付いていたらしい…確かに空気は読めるようだ。
「そう、シャルロット落ち込んでる。でもさっきホークアイと喋って少し元気出てた、ありがとう」
「礼には及ばないさ。レディを笑顔にするのは当たりまー」
ーむぎゅ。
シャルロットの寝顔を覗きこもうとしたホークアイの顔を、ケヴィンは片手で制止した。
「……えーと、ケヴィン?この手はなにかな?」
「リースさんにしたやつ、シャルロットにもするのかと思って…」
「ぱっと見が幼女のシャルロットにそんなことしないから!」
「そっか!ならデュランがテーブルに乗らなくて済む!」
【…ケヴィンって無意識なのかしらねぇ】
【若いのう!わっひゃっひゃっ!】
【デュランさんって興奮するとテーブルの上に乗る癖でもあるんダスかー?】
【まっさかぁ!そんなクレイジーじゃないッスよ~!】
頭の中で会話をする精霊達を放置し、デュランはとりあえずシャルロットが落ち込んでいた理由…クラスチェンジのことを二人に話した。