しばしマナストーンをじっと見つめていたフェアリーがこちらへ振り返り、三人を見て満足げに笑った。
どうやら三人ともクラスチェンジができると確信が持てたらしい。
「…クラスチェンジ……」
「司祭様に聞いてた、デュランの目的!」
そう。デュランは紅蓮の魔導師を倒したい、強くなりたいと思い…強くなるためにクラスチェンジする方法を光の司祭に聞こうとウェンデルを目指した。
だが経験不足だと言われ悔しい思いをした…もっと経験を積まないとマナストーンから力を得られないと。しかしそれが今なら可能と言われ、なんだか信じられないままフェアリーに詳しい説明をしてもらった。
クラスチェンジは光と闇、どちらかを選んで己の強さを引き出せる。
どちらを選んでも強くなれるが…特化している強さの傾きが違うので選んだ力によって戦闘スタイルも変わる。
「…自分がどう戦いたいかで選ぶって事か」
『よーく考えて決めてね……まずはデュランから、マナストーンに触れてみて!』
前に出てマナストーンへ手を伸ばすと、頭の中で光と闇の力が鮮明に浮かんでくる……自分の持つ力の適性や素養も見えた。
(……!?)
どちらの力へ進むか心の中で決めた瞬間マナストーンが強く輝き出し、デュランは思わず目を閉じた。
『クラスチェンジが成功したわ!』
「デュラン、やったぁ!」
「ほわ~!いつのまにきがえたんでち?」
「え??…うわっ!装備っつうか服が違う!?」
ツェンカー戦であちこちボロボロになっていた服が綺麗な別物に変わり…傷が入ってしまった装備も新品の鎧に変わっていた。
『女神様からの授かり物よ、光の力であるナイトにクラスチェンジしたデュランにぴったりだわ!』
マナの女神から……確かに鎧だというのに言うほど重くはなく動きやすい、特別な装備だとわかる。
『ちゃんと中身も変わってるから安心してね…戦闘になったら実感すると思うわ。それじゃあ、次はケヴィンね!』
「わかった!」
フェアリーはそう言ったが、戦闘に入らずともすでに普段とは違う力がある気がする…自分の魔力を感じ取れるようになったのかもしれない。
ケヴィンもクラスチェンジをしたら魔法を扱うのだろうか……デュラン自信は回復魔法を習得できるようになったらしい。
紅蓮の魔導師に負けた当時の自分だったら攻撃回復問わず魔法そのものを拒んだかもしれない、だが今は仲間がいるのだ。
(これでもっと上手く…守る戦い方ができるか?)
『ケヴィンも無事クラスチェンジ出来たわ…闇の力のバシュカーね!』
「う、うん…」
ケヴィンは闇の方向へクラスチェンジしたようだ…攻撃特化の闇を選んだのは格闘が主体の彼らしいが、何故か先程のデュラン以上に戸惑っていた。
「ケヴィン、どうしたんだ?」
「今の……疲れた…頭にいろんなもの、浮かんで、流れてきて…デュランは平気だったのか?」
「お、おう。ちょっとビックリはしたけどな」
デュランと逆の闇を選んだからなのか、それとも慣れない体験をしたせいか…ケヴィンはマナストーンの力に疲労していた。
「デュランは聖剣の勇者だから…かな?」
「うーん、オレは普段から頭ん中にやかましいのがいるから…マナストーンの力にもあんまり違和感無かったっつうのが正解かもな」
『誰がやかましいですって?』
「おまえとか時々テレパシーで会話してる精霊とか」
『ちぃーっす!呼びました?』
「うわっ!呼んでないって!」
『デュランさん光を選んだんッスね!いや~嬉しいなぁ!!今度ボクと一緒に魔法の練習しましょーね!!』
「わかったわかった、そのうちな…」
光の精霊のテンションの高さについていけないデュランをよそめに、フェアリーはシャルロットに声をかける。
『最後はシャルロットよ、マナストーンに触れて!』
「りょ、りょーかいでち!!」
自分の番が近付くにつれ大人しくなっていったシャルロットが慌てて歩み寄り…緊張気味にマナストーンに触れた。