「……うーん…」
「ケヴィンしゃんどうしたんでち?」
「ここ、危ない…ちょっと離れてて」
滝の洞窟の前まで来て、この入り口には結界が張ってあるということを思い出した。
説明するよりも見せたほうが早いと考え、シャルロットの手をはなして前に出るケヴィン…しかし。
「ん?あ、あれ??」
ほんの数時間前は確かにそこにあった結界が無くなっていた。
「わん!」
「っ!ポン太まつでちぃぃ!」
「あ、ちょっ、ちょっと!」
戸惑っている間にポン太が走り出し、追いかけるシャルロットも先に洞窟の奥へ入ってしまう…すぐにケヴィンも続く。
「…シャルロット!洞窟暗い、オイラが先頭歩く!」
「わ、わかったでち……でも、ポン太がいない…」
半分獣人のケヴィンは明かりが無くとも目がきくため、洞窟の中でも人間より動きやすい。
「わぅん!」
「お!みつけたでち!ポーン太…」
「そっちダメ!足場がっ!!」
「うへっっ!!?」
ポン太は足場が無くなる手前のところにいたが、シャルロットはそれに気付かず足を踏み外した。
「シャルロットー!!」
「………で、でちぃ…」
すぐ下には通路となっている足場があり、シャルロットは完全に落下する寸前に手を伸ばしてとどまる事ができた……でも長くはもたないだろう。
「うぇぇ……こ、こわいよぉ…!」
「すぐ行く!待ってて!!」
下までの道を探している暇はない。ケヴィンはポン太を抱き上げ、シャルロットが落ちそうになっている通路まで飛び降りた。
「おいおい!大丈夫かおじょうちゃー」
「アウ!?危なっ!!」
ードチャッッッ!!!!!
飛び降りた場所にタイミング悪く通り掛かったのは、アストリアですれ違ったデュラン……ケヴィンはその上に着地した。
「…うぐぅっ……」
「あ、あの、ごめん!!」
「っ、いてて……え?おまえは…」
『ちょっとデュラン!!早くしないとあの子が落ちちゃうわっ!』
「あ、ああ、そうだった…」
「うわわっ!!?なんでち今の…あっ!」
突然デュランから光が発せられ、小さな妖精が現れる……シャルロットは驚いた拍子に手を離してしまった。
ケヴィンはすかさず追い掛け、落ちるシャルロットを捕まえた。
「させない!落ちるっダメ!!」
「ケ、ケヴィンしゃん!?」
ーがしっっ!!!
「……………おまえも落ちてちゃ、ダメだろうが…!」
落ちていくケヴィンをさらに追い掛けたデュランはギリギリのところで踏ん張り、根性で二人を引き上げた。
「ふぅ、無茶しやがって…」
「オ、オイラ、獣人だから…ウェアウルフに変身できる……変身して落ちたら、少しは傷み緩和されるかもって…」
「それが無茶なんだ!もうそろそろ夜明けだ、途中で変身が解けたら大怪我だぞ!」
「あう…ごめん」
「ごめんちゃい…でち」
『二人とも気にしないで!この人ちょっと荒々しくて狂暴に見えるけど恐くないから大丈夫!』
「人をモンスターみたいに言うなっ!そもそも、おまえがいきなり出てきて驚かしたんだろうが…」
『さっきはごめんなさい、私はフェアリー!こっちはデュランよ!』
フェアリーを見てぽかーんとしている二人だったが、やがてケヴィンが口を開いた。
「オイラ、ケヴィン………シャルロットに、ポン太だ」
「そうださっきから気になってたが…なんだこの犬?」
『だからポン太って言ってるじゃない』
「わん!」
「名前を聞いてんじゃねえっつの」
「くぅん…」