「二人とも早く!風、気持ちいいぞ!」
山登りが得意で身軽に動けるケヴィンがどんどん進んでいく。
普段はデュランが先頭を歩くのだが、周辺の魔物と山道の安全確認のため今日はケヴィンと交代していた。
「はぁ、やまみちはキツいでち…」
「トゲトゲが当たってもいいならおぶってやるぞ?」
「デュランしゃんのカミはチクチクささりそうっていったのねにもってるんでちか!?じぶんであるけるでちよ!」
「おっ!根性あるじゃねえか、そのいきだ!」
デュランはしばらくシャルロットを気にしつつ進んでいたが…先を行くケヴィンの声が聴こえなくなったのでやや歩みを早める。
「おーいケヴィン!……はぐれたか?」
少し開けた場所まで登り辺りを見渡すが、もっと先へ行ってしまったのかケヴィンの姿はない。
「ん?なんだアレ?」
近くの岩から何か飛び出している……明らかにこの山岳地帯に不釣り合いなもの。
「………風船?」
「ソレ触っちゃだめっ!」
風船の側に寄ろうとしたデュランを呼び止める、ケヴィンの声……しかし先程同様姿は見えない。
「デュラン!オイラ、ここ!!」
「………ケヴィンっ!!?」
ケヴィンはデュランの足元にいた…小さくなって。
「なっ…なんだってこんなサイズに…」
「オイラ、そこの風船、触ったら……こうなった」
『ちょっと見せて!』
デュランから光を出しながら現れたフェアリーが、似たような大きさになったケヴィンを確かめる。
『これは……ちび…』
「あうぅ!?フェアリー酷いっ!」
『わ、悪口で言ったんじゃないわ!【ちびっこ】っていう状態異常なの!!』
「ちびっこぉ??そんな状態異常もあるのか…」
「確か、チビデビルが使ってくる攻撃にちびっこ風船っていうのがあったかしら?」
「え、じゃあ…」
「キイイッ!!」
風船が見えていた岩影から小型の魔物、チビデビルが鳴き声と共に飛び出した。
「あいつがチビデビルか!」
『ええ、風船に触れさえしなければ倒すのに問題無い相手よ』
「…そういうことならっ!」
デュランは黄金の街道で拾ったポロンのダーツを取り出し、素早く投げて風船を割った。
「キィ!?!?」
すぐ近くで鳴った風船の破裂音に驚いたチビデビルが地面に落ち…デュランはすぐさま斬り倒すが、それを合図にしたように他の魔物も群がってきた。
「団体さんのおでましか、まとめて叩き斬ってやるぜ…」
『もう!魔物が出たのに楽しそうにしないでよ!』
「オ、オイラはどうしたら…」
「シャルロットにティンクルレインで治してもらえ、フェアリー頼んだぞ!」
デュランが魔物がいる中央に突っ込んでいき、フェアリーは小さくなったケヴィンを誘導してシャルロットの元へ急いだ。
『シャルロットー!ティンクルレインをお願い!』
「どうしたんでち………どひゃー!?これケヴィンしゃんでちか!!?」
「うん、オイラ。ちびっこっていう状態異常、シャルロット治して…」
「なんかちょっとかわいいでち!!このままじゃダメでちか!?」
「か、かわっ!!?だめ!!オイラこのままじゃ困る!」
「もったいないでちねぇ…それでウェアウルフになったらもっとかわいいかも」
「かわいくないっ!獣化もしない!シャルロットお願い戻して!!早くデュラン手伝う!!」
「デュランしゃんあぶないんでちか!?それをはやくいうでち!」
シャルロットは習得したての魔法、ティンクルレインを唱えてケヴィンを本来のサイズへと戻した。
「よし!デュラン加勢する…」
「楽勝だったぜ!」
一日中船の中にいた反動か、大暴れしたかったらしく…デュランはあっという間に魔物達を片付けていた。
「お~!さすがデュランしゃんでちね!」
「アウゥゥ……オイラ何もできなかった…」
「気にすんなって!もうすぐ風の回廊に着きそうだし、気合い入れてこうぜ!」