第14話『勇気のひとかけら』

大砲という移動手段を初めて体験したデュラン……なんとか受け身はとれたが、その衝撃は想像以上。



「………いててて…あのヤロー!!失敗しやがった!」



ボン・ボヤジはフォルセナまで飛ばすと言っていたはずだが、痛みに耐えながら立ち上り周りを確認するとそこはフォルセナ付近にあるモールベアの高原。


「アウゥ……足、ビリビリして痛い…」



「ケヴィンおまえ両足で着地したのか!?すげぇな……あれ?シャルロットがいないー」


「でえぇえぇぢぃぃぃぃぃ!!!!!」



落ちた場所が悪かったらしく、シャルロットは高原の急斜面をごろごろ転がったまま止まれなくなっていたのだった。









「シャルロット、だいじょうぶ…か?」



ちょうど丘になっているところから長い道のりを下って、モールベアが掘ったと思われる大きな穴に降りて中の空洞を進み…だいぶ奥のところでようやく二人はシャルロットに追いつき、穴の外へ脱出した。



「ひぐっ、うぅっ、いだいでぢぃ…」



空から地面に叩きつけられたあげく高原を転がり、そのうえ穴に落ちてもまだ転がって行き止まりに激突し……シャルロットは定位置になりつつあるケヴィンの背中にしがみつきながら泣きじゃくっていた。

さらに身体中痛いからか自分自身にヒールライトを唱える元気も無い様子。


「で、でもよぉ!転がりながら魔物を蹴散らしててすごかったぜ?おかげで邪魔もされなかったし、フォルセナはすぐそこだ!」


デュランはシャルロットの涙と顔に着いた泥を手ぬぐいで拭いてあげながら、少し大袈裟に頭を撫でる。


「ぱっくんチョコ食っていいから、もうちょっとだけ頑張ろうな?」


「びえぇっ……が、がんばる、でぢっ…」



いつものまんまるドロップよりも回復力の高いぱっくんチョコを受け取ると、やや顔をしかめてポケットにしまいこんだ……チョコは嬉しいが顔面の痛みが引くまで食べる動作はしたくないのだろう。


それでも多少は落ちついてきたらしく、背中から聴こえる泣き声が小さくなったのでケヴィンは安心して歩みを進めた。


「デュラン、すごいな。泣いてる子供あやすのうまい…」

「シャルロットはこどもじゃないでち!」

「あっ、ごめん…」


「オレは妹がいるから慣れてるだけだって……妹感覚でオレもつい子供扱いしちまうけど、そこは勘弁な?」


「…ぱっくんチョコにめんじて、ゆるすでち」



シャルロットは兄気質のデュランに対してはあまりムキにならない…同い年のケヴィンに子供扱いされるのとはまた違うらしい。


(……にいちゃんみたいなデュラン、やっぱりすごい…)


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