ワッツがいたのはドワーフが掘ったトンネルにしては妙な作りになっている、穴が両サイドにある壁際。
今まで通ってきた通路とは違う……まるで巣穴のようなところだ。
「んだ??こんな穴、今まで無かった……オラ嫌な予感がするだ」
「ちょっとワッツしゃん!!デュランしゃんのけんをもちにげしないで、かやくをくだしゃいでち…」
「待てシャルロット!!」
デュランは穴から異様な気配を感じとりシャルロットを制止し、すかさずケヴィンがシャルロットの手を引き素早く元の位置まで戻る。
ーズシャッッ!!!
「ななな、なんでちかぁ!!?」
シャルロットがいた場所に長い何かが伸びてきて鞭のように地面を叩きつけていった。
「こ、こんなところ長居は無用だべ~!!がさばるからあんたの剣返しとくだっ!」
「あっぶねぇっ!!?投げるなよオッサン!!」
「デュラン、あれ!」
放り投げられた剣をそのまま構え向き直ると、右の穴から巨大なモグラのような生物が這い出てきた。
「フェアリー!こいつモグラの突然変異とかじゃないよな!?」
『違うわ!ジュエルイーターと呼ばれる地底獣で魔物と一緒よ!』
「魔物か…なら容赦なく叩き斬ってやるぜっ!」
「加勢する!シャルロットは下がってて!」
「わかったでち!」
左右の大きい前足に向かってデュランとケヴィンで攻撃を仕掛け、シャルロットは回復魔法で援護に回るため下がろうとした。
『シャルロット上っ!』
「ふえっ!?」
フェアリーの声に上を向くと先程の鞭のようなものが振り上げられており、シャルロットは慌てて転がり避ける。
「こいつの舌!離れてても危ない!」
「あれって舌だったのかよ…っと!!」
シャルロットにかわされたことで標的を見失ったジュエルイーターへ斬撃を入れ、続けて十文字斬りを大胆に喰らわす。
「やった!…オイラもっ!!」
ジュエルイーターが動けなくなったところにケヴィンも夢想阿修羅拳で追い討ちをかける。
連携が上手く入り、こちらの優勢でいけると思ったその時……ジュエルイーターが大岩を投げるという予想だにしない攻撃を繰り出した。
近くにいたケヴィンは避ける間もなく命中し、その場でダウンしてしまった。
「シャルロット!ケヴィンの回復だ!」
「まかせるでち!」
デュランはシャルロット達を守ろうと正面から挑む……だが、ジュエルイーターの様子がおかしい。
「気をつけろ!あの野郎何か仕掛けてきー」
ーダンッッッ!!!!!
ジュエルイーターがいきなり突進し、向い側の穴へと消えていく……その進行方向にいた三人は横の岩壁に弾き飛ばされた。
「いたたぁ!まだかいふくとちゅうでちぃ!!」
『向こうの穴からもう一度来るわよ!』
「させるかっ!!」
突進を繰り返そうとスピードを緩めず穴から現れる…デュランがとっさに持っていた剣を投げるとジュエルイーターの額に剣先が刺さり動きを止めたが、それが逆鱗に触れたのかジュエルイーターは奇声を上げた。
「ぎょえっ!モグラしゃんぷんぷんでち!!!」
「オレが引き付ける、巻き込まれないよう気を付けろ!」
デュランはブロンズソードを鞘から抜いてジュエルイーターへと走り、シャルロットは離れたところに倒れていたケヴィンに駆け寄る。
「……うぅ…」
「しっかりするでち!」