第11話『ドワーフの守り神』

フォルセナに行くためにはボン・ボヤジの大砲に使うニトロの火薬が必要であり、街で聞いた情報では大地の裂け目のどこかにあるドワーフの村なら火薬を取り扱っているとのことだった。


「今度は大地の裂け目に戻ってきて…行ったり来たりになっちまってるなぁ」


『文句言わないの、もうちょっと進んだところに金の女神象だってあるんだから』


「フェアリー!さっき銀色の女神像あった、銀色だと回復できないか?」


『え、ええ。銀の女神像はできないけど…』


「じゃあ何のためにあるんだ??」

『お祈りするためでしょっ!』


「アウゥ、そっかぁ…」




マシンゴーレムとの戦いで崩れ落ちてしまった釣り橋の場所へと登る途中の、大地の裂け目の洞窟内。

デュラン達はフェアリーに促され、金色の女神像の前に並んだ。




『ほら、祈って!』


「えと、じゃあ……シャルロットの疲れがふきとびますように!」



それはお祈りというかお願いじゃないのか?
デュランがそう言いかけると女神像が輝き、ヒールライトに似ている優しい光が三人を癒した。



「ふぃ~!これであるけるでち!」



シャルロットはぴょんとケヴィンの背中から降りてその場で伸びをした。



『ね?女神様のご加護はすごいんだから!』


「すごいけど、祈るって……いや、祈願っていうくらいだから誰かの事を願うのはありなのか」


「シャルロットはいつもおじいちゃんたちとおいのりしてまちたよ!こんどデュランしゃんにも、おいのりのしかたをおしえてあげるでち!」


「え?オレはいいよ別に」


「せいけんのゆうしゃがなにいってるでちか!」


「その『聖剣の勇者』っていうのもなぁ、オレのがらじゃないっつーか…」



「デュラン、ちょっといいか?」


「お、おう!なんだケヴィン!」



意図的ではないが自分に不向きな話題へ助け船を出すかのように呼んできたケヴィンに、デュランはこっそり感謝した。



「ここの壁、空気が流れてる匂いする」



金の女神像のちょうど向かい側…言われてみればその辺りの壁だけやや不自然な岩でできている。



『おお!!待ってました~!ここはボクの出番ッス!』

「うわっ!?光の精霊!!」


『やだなぁ名前で呼んで下さいよ!ウィル・オ・ウィスプって!』


「長いんだよその名前……フェアリーもそうだけどなんで精霊はいきなり登場したがるんだ」


『そうだ!長くて呼びづらかったらボクのことはウィスプ呼びでよろしくッス!』


「ん〜?ウィスプしゃん、せいかくかわったでちか?このまえは『オレ』っていってたのに『ボク』になってるでち」


『エヘヘ!!フェアリーさんとお喋りしてるとなんとなーく『ボク』って言いたくなるんッスよね~♪』



(つまり、フェアリーの舎弟みたいになったのか?軽い性格は変わってねえってことだな……フェアリーの気が強いだけかもしれないけど)


『デュラン、聴こえてるわよ』


「だから心の中を読むな…」



ウィル・オ・ウィスプが言うには大地の裂け目の岩は水晶などの宝石を含んでおり…ドワーフ族はそれを利用して光の屈折による幻を見せ、村へと繋がるトンネルを隠しているらしい。


「それじゃあケヴィンの言う、空気が流れてるっつうのは…」


『そういうことッス!ほらほら!ボクの光でこうやって………じゃーん♪』



ウィスプの力で光の屈折方向を変えると、岩壁が消えて洞窟の地下奥に続く通路が現れた。


「アウっ!?岩の壁、無くなった!」


『驚いたッスか〜?これが真実の姿ッス!ドワーフのトンネルへの入口ッスよ!では行きましょう、さあさあさあ!!』


「そうか、ありがとなウィスプ。ちょっとやかましいからもう引っ込んでいいぞ」

『らじゃ〜ッス♪』


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