第36話『当たり前の気持ち』

火山島ブッカにてケヴィンが見つけた村は魔物であるダークプリーストの集落だった。

だがこちらに襲いかかってきたりしないで普通に会話が成立し、島を脱出する方法を教えてくれた。




「買い物までできるとは思わなかったぜ…」


「ほとんどのアイテム、海水浸かっちゃったから助かるな!」



まんまるドロップやぱっくんチョコなど、道具袋に入れていた食べ物系の消費アイテムはほぼ全滅していた。


元々漁港パロでは無料の船を見つけてアイテムの補充をせずにすぐ乗り込んだため、手持ちは少なかったが…。




「まりょくもかいふくできまちたし、あとはヌシさんさがしでちね!」



金の女神像と同じ効果のある個性的なオブジェもあったので完全回復もできている。

そして一行の目的は島からの脱出を手助けしてくれるかもしれない『海のヌシ』を探すこと。



「ダークプリーストしゃんたちがいってたどうくつにレッツゴーでち!」



『ふふっ、シャルロットご機嫌ね!』


「なんてたってヒースのユメをみまちたからね♪」


「ヒースさんの?それでさっき楽しそうだったのか」


「へっへーん!ユメのなかのヒースにぬいぐるみをもらったんでち!」




(それでオレは締め付けられたんだけどな…)



「とーってもかわいかったでち!ヒースがくれた、モールベアのぬいぐるみ♪」


「……シャルロット!ぬいぐるみ貰わなくても、モールベアならデュランがいるぞ!」

「ケヴィンそりゃどういう意味だ」


状況的に文句は言えないので黙っていたデュランだったが、ケヴィンの言葉に思わず反応した。



「デュランしゃんはでかすぎるでちよぉ…さっきの『ちびっこ』すがたはかわいかったでちけど」


「ならもう一度ちびっこハンマー使おう!デュラン小さくする!」


「小さくすんな!っつうかオレをぬいぐるみ代わりにしてどうすんだよ?」


「そうでちよ!デュランしゃんのおおきさがどうこうじゃなくて、ヒースにもらったことがじゅうようなんでちから!」

「うぅ、そっか…」


「ほら!どうくつにいくでち~!」



「おいシャルロット!先頭歩くと危ねえぞー!」


「デュランしゃんこそきをつけないとまたイシにされちゃうでちよ~!シャルロットがさきのほうがあんぜんでち♪」


「だから待てっつの!」





「……………」


『ケヴィン?どうしたの?』



ケヴィンは歩みを早めた二人を追うこともせず俯いてしまったので、不思議に思ったフェアリーが声をかける。



『元気が無いみたいね…?』



「アウゥ………フェアリー、オイラ…最近こうなる。なんでかな…」


『最近?』


「シャルロットが、ニキータもふもふしようとした時もなんか慌てちゃったけど……ホークアイに腕輪貰ってるの見たり、ヒースさんの夢で喜んでるの見たら、こう…よくわかんなくなる。オイラ、変だよね…」


『ケヴィン、それは変じゃないわ。普通のことだから大丈夫!』


「ほ…ほんと?」


『ええ!嬉しそうなシャルロットを見てちょっと寂しくなっちゃっただけ」


「シャルロットが嬉しいなら…オイラも嬉しいのに、なんで寂しくなる?」


『それは…疎外感みたいなものって表現が近いかしらね?』



「そがいかん??」


『普段仲良しだから、余計に寂しくなっちゃうのよ。自分もシャルロットを笑顔にしたいなって…』



「うーん………オイラも…ヒースさんやホークアイみたいに、シャルロット笑顔にできるかな?」


『もちろんよ、いつもそうでしょ?』


「……ウン、いつもそうなら大丈夫かも!ありがとうフェアリー!」



ようやく顔を上げて明るい表情になったケヴィンは元気に駆け出して、すぐにデュラン達に追いついた。



「村で聞いたのはこの辺なんだよなぁ…」


「どうくつなんてないでち」


「二人とも!そこから潮の香りする!きっとその奥に洞窟ある!!」


「??…この岩だらけの場所か?」


「ならノームしゃん!おねがいでちー!」


『わっひゃっひゃ!お易い御用じゃ♪』



ノームを呼び出して山になっている岩を退かし……姿を現した洞窟へと三人は足を運ぶ。



『………私が言えるのはこのくらいかしら…ケヴィン、頑張ってね…』