第16話『それぞれ気持ちは一緒』

「あの、シャルロット……ま、まだ?」


「うひひ!まだまだでちっ!」




ほとんど夜食に近い夕食を済ませて、デュラン達も風呂に行きあとは寝るだけとなった現在。


あまり会話に入ってこないシャルロットに気を遣ったケヴィンは『約束してたから』と獣化し…ウェアウルフ特有の耳や尻尾をもふもふされていた。



「こうしてるとワンちゃんみたいでちね~!」


「アウぅぅ……獣人、イヌじゃなぃ…」



(…やっぱビースト兵とは違うんだよなぁ、ケヴィンは)



デュランが城塞都市ジャドで目にした獣人…ビースト兵達は夜になると本能的に獣化し、人間の街を占領している事も頭から抜けたように好き勝手に騒いでいた。

そのおかげで警備が手薄になりジャドから脱出できた訳だが……ケヴィンはそんな獣人達と違い、不必要に獣化はしない。


獣化自体は自分の意思でできるうえ、人間とのハーフなことに加えて彼の元々の優しい性格が理性をそこなわいよう働きかけているのかもしれない…仲間のピンチにはそれが外れてしまう事もあるようだが。




「おいシャルロット、そのへんにしとけよー?ケヴィンだって疲れてんだから」



しかし普段あまりしない獣化の状態で遊ばれまくっているのは心地よくないだろうと、さすがに止めに入る。


「えぇ~、もうちょっと…」


「ダーメだ!」




デュランがシャルロットを引き剥がし…ケヴィンは獣化を解きながら、ぼふっとベッドに倒れこんだ。


「ふえっ!?だ、だいじょぶでちか!?」


「…zzZZZ」


「寝てるだけだよ、おまえもいい加減寝ろ。明日は……っつっても今日だけど、大砲の準備ができしだい出発するからな」



フォルセナ兵の話では城にボン・ジュールという大砲職人を招いたとのこと。名前からしてボン・ボヤジの親類だろう人物に、マイアまで送ってもらう予定だ。



「はぁい、たいほうでとぶんでちね……あんまりすきじゃないけど、りょうかいちまちた」



再び大砲で空に打ち上げられることに不満そうだが、ケヴィンのおかげでだいぶ機嫌はなおったらしい。

これならば心配ないかと、明かりを消してデュランもようやく布団に潜り込んだ。




【デュランよくわかったわね!ケヴィンが眠いの我慢してるって】


(わかってた訳じゃねえよ……なんとなくずっと無理してそうには見えたけどな、ケヴィンもシャルロットも)


【仲間をしっかり見てるのね、がらじゃないとか言ってたけど勇者っぽくなってきたじゃない♪】


(そんなんじゃねえっつの、茶化してないでおまえも寝ろ!)


【はーい、おやすみなさい!】


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